
心を開き別世界へ想像の旅 東京国立近代美術館
光や風を取り入れたり、外の景色を眺めたりと生活にとって必要な窓。それゆえ美術の世界でも古くからモチーフとなって絵画などで描かれてきた。「窓」をキーワードにした展覧会「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」が、東京・竹橋の東京国立近代美術館で開かれている。近代から現代美術まで約110点。窓とともに別世界の旅ができる。(渋沢和彦)
窓が際立つ1点の油彩画がある。20世紀を代表する仏作家、アンリ・マチス(1869〜1954年)の「待つ」。窓の外は青い海やまぶしい浜が広がる南仏の明るい景色。海辺の部屋にもまばゆい光が注がれ、2人の女性を浮かび上がらせる。一方の女性の手は浜にあるヤシと重なり、内と外が結ばれている。マチスはニースに借りたアパートで、こうした窓のある絵を多く描いていた。
ピエール・ボナール(1867〜1947年)の赤みを帯びた色彩が強烈な「静物、開いた窓、トルーヴィル」など魅惑的な絵画が多い中で、直接的に窓の存在を際立たせているのが写真作品だろう。郷津雅夫(ごうづ・まさお)(1946年〜)の「Windows」シリーズはその1つ。写っているのは窓に身を寄せて外を見つめる人々だ。ニューヨークのダウンタウンでパレードの際に撮ったという。郷津は1970年代からニューヨークで活動し、40年以上も窓を主題に撮り続けてきた。窓から興味深そうに外を見ている人の姿は、外の光景がどんなものかを想像させ、同時に窓の存在を一層引き立てている。(2019/11/24 産経新聞)
窓展 出展作家が語る制作秘話
1971年、学生ビザのため、ニューヨークのアートスクールに通い、ローワーイースト再度に住みだした。安アパートを出ると、道を挟んだ向かいのアパートの窓には日がな一日、外を見る二人のイタリア系老婆が住んでいた。決して裕福とは言えない移民者の多いその近所には、住人の姿が見える窓が多く、中古で買ったカメラを持って、うろつく自分と移民者が重なり、強固な石造りの窓からのぞく視線を追い続けるうちに、窓は自分にとっての鏡の様になっていた。
当時、財政破綻寸前の街には、ドラッグ、犯罪が蔓延し、放置された空きビルが至る所にあった。この写真は、無法地帯の壊れかかったビルから窓を運び出し再構築し、たまたま見つけた犬の剥製、造花、顔見知りのホームレスに頼んだ造り物の窓の一枚。大きくプリントした写真と共に立体(窓)がニューオーリンズ美術館にある。(東京新聞)

